ブラックロック(BlackRock, Inc.)は、世界最大の資産運用会社であり、日本ではブラックロック・ジャパン株式会社を通じて日本株式を含む様々な資産を運用しています。ブラックロックが保有する日本銘柄に関する情報は、大量保有報告書(5%ルール)や投資信託の組入銘柄、ETF(上場投資信託)であるiシェアーズの保有状況などから把握できますが、具体的な保有銘柄の全貌は公開情報に基づいて一部のみが明らかになっています。以下に、ブラックロックの日本銘柄保有に関する概要と代表的な例を解説します。
ブラックロックの日本市場での運用概要
- 運用資産規模: ブラックロックは2024年時点で約11.5兆ドル(約1,732兆円、2025年3月末時点)の運用資産残高を持ち、日本市場でも積極的に投資を行っています。日本では、アクティブ運用(個別銘柄選定)とパッシブ運用(インデックス連動型)の両方で活動しており、特にiシェアーズETFを通じて幅広い日本企業に投資しています。
- 投資方針: ブラックロックは、成長性や配当利回り、ESG(環境・社会・ガバナンス)基準を重視した投資を行うことが特徴です。また、スチュワードシップ活動を通じて、投資先企業の長期的な価値向上を目指しています。
- 保有形態: ブラックロック・ジャパンおよび関連会社が保有する銘柄には、個別株式、投資信託、ETF経由での保有が含まれます。5%以上の保有は大量保有報告書として公開されますが、5%未満の保有は非開示の場合も多いです
ブラックロックが保有する日本銘柄の例
以下は、公開情報や大量保有報告書、Xの投稿などから確認されたブラックロック・ジャパンおよび共同保有者が関与する日本銘柄の一部です。なお、具体的な保有割合や銘柄は変動する可能性があるため、最新の大量保有報告書や投資信託の情報を確認することが重要です。
大量保有報告書に基づく銘柄
ブラックロック・ジャパンは、5%以上の株式保有が発生した場合、財務省に報告書を提出します。以下は最近の報告例です:
- リコー(7752): 2025年5月20日、ブラックロック・ジャパンと共同保有者の保有割合が7.81%から8.27%に上昇。報告義務発生日は5月15日。
- ヤマハ(7951): 2025年5月21日、ブラックロック・ジャパンと共同保有者で5%超の保有が判明。
- エムスリー(2413): 同日、5%超の保有が報告された。
- すかいらーくHD(3197): 2025年1月14日、ブラックロックが6.12%(約1400万株)を保有。資さんうどんの事業拡大などを評価した可能性がある。
- 積水ハウス・リート投資法人(3309): 2025年5月20日、保有割合7.75%(-0.10%の変更)。
- 大和証券リビング投資法人(8986): 同日、保有割合5.83%(-1.59%の減少)。
- その他の銘柄: 過去の報告や情報から、日本エアーテック(6291)、東海運(9380)、豊和工業(6203)、THEグローバル社(3271)、TOWA(6315)、石川製作所(6208)、TDK(6762)、ソシオネクスト(6526)などが保有銘柄として挙げられています。
投資信託・ETFを通じた保有
ブラックロックは「ブラックロック日本株式オープン」や「ブラックロック日本小型株オープン」などの投資信託、及び「iシェアーズ・コア TOPIX ETF」「iシェアーズ MSCI 日本株最小分散 ETF」などのETFを通じて日本銘柄に投資しています。これらのファンドは、TOPIXやMSCIジャパン指数に連動するものが多く、以下のような企業が含まれる可能性があります:
- 大型株: トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソニーグループなど、S&P500種株価指数に類似する日本市場の主要企業。ブラックロックはS&P500の80%以上の企業で上位3位以内の株主であるため、日本でも同様に主要企業の株式を保有していると考えられます。
- 高配当株: iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETFの日本版に相当する戦略として、高配当利回りの日本企業(例:三井住友フィナンシャルグループ、NTTなど)が含まれる可能性。
- 小型株: ブラックロック日本小型株オープンの組入銘柄は非公開だが、成長性の高い中小型株(例:ソシオネクストなど)が対象となる。
資生堂(4911)の事例
2024年春、ブラックロックは資生堂を大量に買い増したと報告されています。中国市場での需要減少による株価下落を背景に、資生堂の経営陣がリストラや効率化を計画したことを評価した可能性があります。
ブラックロックの投資戦略と日本銘柄への影響
- ESG投資の重視: ブラックロックはESG基準を投資判断に組み込んでおり、環境やガバナンスに優れた企業を優先する傾向があります。ただし、2022年にはiシェアーズ ESG アウェア MSCI 米国ETFが軍需企業や石油企業を保有していたことが議論を呼び、日本でも同様の基準が適用される可能性があります。
- スチュワードシップ活動: ブラックロックは投資先企業に対し、年次書簡(例:2025年ラリー・フィンク書簡)を通じてサステナブルなビジネス慣行を求めるなど、積極的に関与しています。日本企業に対しても、ガバナンス改善や長期的な価値創造を促す姿勢が見られます。
- 市場への影響: ブラックロックの大量保有は株価に影響を与えることがあり、例えば、すかいらーくHDや資生堂の買い増しは市場で注目されました。外資系投資家の動向として、日本の投資家より迅速な情報収集と投資判断を行うとされています。
具体的な保有銘柄リストの入手方法
- バフェット・コード: ブラックロック・ジャパンが保有する326銘柄とその評価額を確認できる情報サイト。5%未満の保有も含まれるため、幅広い銘柄が把握可能。
- 株探(kabutan.jp): ブラックロックが提出した大量保有報告書の一覧を閲覧可能。
- IR Bank: ブラックロック・ジャパンの保有銘柄(例:日本エアーテック、TDKなど)がリスト化されている。
- ブラックロック公式サイト: iシェアーズETFや投資信託の運用状況を確認できるが、個別銘柄の詳細は限定的。
留意点
- 情報の限界: ブラックロックの保有銘柄の全貌は、5%未満の保有や非公開の投資信託の組入銘柄により完全には把握できません。投資判断には最新の開示情報を参照する必要があります。
- リスク: ブラックロックの投資行動は市場に影響を与えますが、株価変動や為替リスク、ESG基準の変更によるポートフォリオ調整の可能性も考慮すべきです。
- 投資家へのアドバイス: ブラックロックが保有する銘柄は有望な投資対象とみなされる場合がありますが、個別銘柄の選定には慎重な分析が必要です。
結論
ブラックロック・ジャパンは、リコー、ヤマハ、エムスリー、すかいらーくHD、資生堂、TDK、ソシオネクストなど多様な日本銘柄を保有しており、投資信託やiシェアーズETFを通じてさらに幅広い企業に投資しています。保有銘柄は成長性や配当利回り、ESG基準に基づいて選定される傾向があり、市場への影響力も大きいです。最新の保有状況を知るには、バフェット・コードや株探、IR Bankなどの情報源を活用し、大量保有報告書や投資信託の開示資料を確認することをお勧めします。
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