サイバーセキュリティへの投資と見通し

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サイバーセキュリティとは、コンピュータシステム、ネットワーク、データ、ソフトウェアをサイバー攻撃、データ漏洩、不正アクセス、悪意のあるソフトウェア(マルウェア)などの脅威から保護するための技術、プロセス、対策の総称です。主な目的は、情報の機密性、完全性、可用性を確保することです。

主要な要素

  1. 機密性: 許可されていない者がデータにアクセスできないように保護する。
  2. 完全性: データが改ざんや破損なく正確であることを保証する。
  3. 可用性: 必要なときに正しいユーザーがデータやシステムにアクセスできる状態を維持する。

主な脅威

  • ハッキング: 不正アクセスによるシステム侵入。
  • マルウェア: ウイルス、ランサムウェア、トロイの木馬など。
  • フィッシング: 偽のメールやウェブサイトで個人情報を盗む手口。
  • DDoS攻撃: システムを過負荷にしてサービスを停止させる攻撃。

対策の例

  • ファイアウォールやアンチウイルスソフトの使用。
  • データの暗号化。
  • **多要素認証(MFA)**の導入。
  • 定期的なソフトウェア更新やセキュリティ教育。

サイバーセキュリティは、個人、企業、政府などあらゆる組織にとって重要な課題であり、デジタル社会の安全を支える基盤です。

サイバーセキュリティの将来性

サイバーセキュリティの将来性は非常に高いです。

  1. デジタル化の加速:企業や個人のデジタル依存度が増す中、クラウドサービス、IoT、AIの普及でサイバー攻撃の対象領域が拡大。セキュリティ需要は急増中。
  2. サイバー犯罪の増加:ランサムウェア、フィッシング、データ漏洩などの攻撃が高度化・多様化。2024年のグローバルサイバー犯罪被害額は約9.5兆ドルに達すると推定(Cybersecurity Ventures)。専門家の需要は高まる一方。
  3. 規制強化:GDPRや日本の個人情報保護法など、データ保護に関する法規制が厳格化。企業はコンプライアンス対応のため、セキュリティ投資を拡大。
  4. 人材不足:世界的にサイバーセキュリティ専門家の不足が深刻。2023年時点で約400万人の人材不足(ISC2)。高いスキルを持つ人材は引く手あまた。
  5. 新技術の台頭:AIや量子コンピューティングの進化は新たな脅威を生む一方、防御技術の革新も進む。ゼロトラストや自動化セキュリティの需要が増加。

世界のサイバーセキュリティ市場

  • 市場規模:2023年の市場規模は約1,722億4,000万米ドル(約20兆円)で、2024年には1,937億3,000万米ドル、2032年には5,627億2,000万米ドルに成長すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は14.3%です。
  • 成長要因:
    • クラウドコンピューティングの採用増加によるセキュリティニーズの高まり。
    • データプライバシーの重要性の向上。
    • AI(人工知能)やML(機械学習)を活用したサイバーセキュリティソリューションの進化。
    • サイバー攻撃(特にランサムウェアやフィッシング)の増加と巧妙化。
    • IoTデバイスの普及やデジタルインフラへの依存度の高まり。
  • 主要企業:Cisco、Palo Alto Networks、Fortinet、Microsoft、CrowdStrikeなどが市場をリード。市場シェアは分散しており、Palo Alto Networksが最大シェアを拡大中。
  • トレンド:
    • 生成AIを活用した脅威予測や複雑なパスワード生成。
    • ゼロトラストセキュリティやSASE(Secure Access Service Edge)の採用増加。
    • クラウドベースのセキュリティソリューションへのシフト。

日本のサイバーセキュリティ市場

  • 市場規模:2025年の市場規模は約22億7,000万米ドル(約3,000億円)で、2030年には39億8,000万米ドルに達する見込み。CAGRは11.89%です。
  • 成長要因:
    • デジタル経済の推進、高速インターネットインフラの整備、オンライン銀行サービスの拡大。
    • サイバー攻撃の増加(特に標的型攻撃)による需要増。
    • 政府による新たな立法や戦略の策定(例:能動的サイバー防御法の成立)。
  • 国内市場の動向:
    • 2023年の国内情報セキュリティ市場は1兆4,628億円で、前年比9.8%成長。
    • サイバーセキュリティクラウド、FFRIセキュリティ、トレンドマイクロなどの銘柄が注目。

サイバーセキュリティ関連の銘柄

サイバーセキュリティ関連銘柄として、以下の企業が日本の市場で注目されています。

  • FFRIセキュリティ(3692):標的型攻撃対策に特化した製品を開発・販売。防衛省や自衛隊向け案件も受託。
  • サイバーセキュリティクラウド(4493):クラウド型セキュリティサービスを提供。情報漏洩対策で注目。
  • ラック(3857):総合的なサイバーセキュリティソリューションを提供。
  • グローバルセキュリティエキスパート(4417):セキュリティ人材育成やコンサルティングが強み。
  • ソリトンシステムズ(3040):ネットワークセキュリティや認証技術に特化。
  • トレンドマイクロ(4704):ウイルス対策ソフトやクラウドセキュリティで知られる大手。
  • デジタルアーツ(2326):ウェブフィルタリングや情報漏洩防止ソリューションを提供。
  • セキュアヴェイル(3042):セキュリティ監視や運用サービスに注力。
  • イー・ガーディアン(6050):ソーシャルメディア監視やセキュリティサービスを提供。
  • アズジェント(4288):海外セキュリティ製品の導入支援やコンサルティング。
  • サイバーリンクス(3683):多要素認証や電子認証サービスを提供。
  • GFA(8783):セキュリティ関連の新興企業として注目。
  • SHIFT(3697):ソフトウェアテストやセキュリティサービスに強み。
  • カウリス(153A):不正アクセス検知や認証技術に特化。
  • 日鉄ソリューションズ(2327):大規模システム向けセキュリティソリューションを提供。
  • バルテス・ホールディングス(4442):セキュリティテストや品質保証に注力

サイバーセキュリティ関連の投資ファンド

サイバーセキュリティ関連の投資ファンドとして、以下のものが日本で主に取り扱われています。

  1. サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジなし)
    • 運用会社: 三菱UFJアセットマネジメント
    • 概要: 日本を含む世界の金融商品取引所に上場するサイバーセキュリティ関連企業の株式に投資。サイバー攻撃に対するセキュリティ技術を有する企業や、関連製品・サービスを提供するテクノロジー企業を対象。原則として為替ヘッジは行わない。
    • 特徴: ヴォヤ・インベストメント・マネジメント・カンパニー・エルエルシーに運用指図を委託。為替相場の変動影響を受ける。
    • 取扱金融機関: 楽天証券、大和証券、三井住友信託銀行、ちばぎん証券、マネックス証券など。
  2. サイバーセキュリティ株式オープン(為替ヘッジあり)
    • 運用会社: 三菱UFJアセットマネジメント
    • 概要: 上記と同様にサイバーセキュリティ関連企業の株式に投資するが、原則として為替ヘッジを行う。為替変動リスクを抑えたい投資家向け。
    • 取扱金融機関: 楽天証券、SBI証券など。
  3. サイバーセキュリティ株式オープン(予想分配金提示型)
    • 種類: 為替ヘッジあり/なし、隔月決算型、3ヵ月決算型
    • 概要: 分配金を予想して提示するタイプ。投資対象は上記と同じくサイバーセキュリティ関連企業の株式。
    • 取扱金融機関: 三菱UFJアセットマネジメント、楽天証券など。

為替ヘッジについて

為替リスクとは:

  • 外国資産に投資する場合、為替レートの変動により、投資先の資産価値が円換算で増減します。例えば、ドル建て資産を持っている場合、円高になると円換算での資産価値が減少します。

為替ヘッジの仕組み:

  • 為替予約:将来の特定の為替レートで通貨を交換する契約を結び、為替変動の影響を固定。
  • 通貨オプションや先物:為替レートの変動に対する保険のような役割を果たす。
  • これにより、為替レートが変動しても、ファンドの収益が大きく影響を受けないようにします

ヘッジの種類:

  • ヘッジあり:為替リスクをほぼ完全に抑える。安定性は高いが、ヘッジコスト(手数料など)がかかる。
  • ヘッジなし:為替リスクをそのまま受け入れる。為替変動による利益を得る可能性もあるが、リスクも高い。

サイバーセキュリティ関連のETF

サイバーセキュリティをテーマにしたETF(上場投資信託)には、以下の主要なものが含まれます。これらはサイバーセキュリティ関連企業に投資し、業界の成長を取り込むための選択肢として人気があります。

  1. ファースト・トラスト・ナスダック・サイバーセキュリティETF (CIBR)
    • 概要: NASDAQ CTAサイバーセキュリティ・インデックスに連動し、CrowdStrike、Palo Alto Networks、Fortinetなどの主要企業に投資。約40~50銘柄で構成され、AIやクラウドセキュリティに注力する企業を重視。
    • 特徴: 経費率が低め(約0.60%)、配当利回り約0.30%。分散投資に適しており、安定性を求める投資家に人気。
    • 株価(2025年2月時点): 約66.13ドル(基準価額)。市場価格はプレミアムまたはディスカウントで取引される場合あり。
  2. ピュアファンズ・ISE・サイバー・セキュリティー・ETF (HACK)
    • 概要: Prime Cyber Defense Indexに連動し、サイバーセキュリティのハードウェア・ソフトウェア企業に投資。運用資産は約1兆円以上。
    • 特徴: 銘柄分散が広く、シスコシステムズの比率が低い点でCIBRと差別化。経費率は約0.60%、配当利回りは約0.2%。
    • 備考: 2016年から楽天証券などで取引可能。
  3. グローバルX サイバーセキュリティ ETF (BUG)
    • 概要: サイバー攻撃対策やクラウドベースのセキュリティ企業に投資。SentinelOne、Zscaler、CrowdStrikeなどが主要保有銘柄。
    • 特徴: 比較的新しいETFで、経費率は約0.50%、配当利回りは約0.1%。成長志向の投資家に人気。
  4. iShares Cybersecurity and Tech ETF (IHAK)
    • 概要: NYSE FactSet Global Cyber Security Indexに連動。Fortinet、Check Point Software Technologies、NortonLifeLockなどを含む。
    • 特徴: サイバーセキュリティだけでなく、グローバルなテクノロジー企業にも投資。経費率は約0.47%、配当利回りは約0.45%。
  5. WisdomTree Cybersecurity ETF (WCBR)
    • 概要: WisdomTree Team8 Cybersecurity Indexに連動し、Rapid7やVaronis Systemsなど中小型株中心。
    • 特徴: 成長性の高い新興企業にフォーカス。経費率は約0.45%。

選び方のポイント

  • 経費率: CIBRやIHAKは経費率が低めでコストを抑えたい場合に適しています。
  • 分散度: CIBRやHACKは銘柄数が多く、リスク分散に優れます。
  • 成長性: BUGやWCBRは新興企業に投資し、ハイリターンを狙う投資家向け。
  • 市場動向: サイバーセキュリティ株は地政学リスクやAI需要の高まりで注目される一方、ハイテク株と同様に市場変動や金利政策の影響を受けやすいです

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